ニューロオリキュロセラピーとは
ニューロオリキュロセラピー
オリキュロセラピーはかなり以前から欧米に広く普及している療法です。日本国内でも一部にオリキュロセラピーをアレンジした独自の手法がダイエット療法として行われているようですが、どういう訳か欧米で普及しているそのままのオリキュロセラピーは入って来ていなかったようです。
マイアミ大学医学部の研究はダブルアブストラクト(二重抄録)と呼ばれる手法で同一メンバーによる異なった二つの研究①オリキュロセラピー ②サブラクセーションにもとづくカイロプラクティック(トルクリリース・テクニック)の報告で、三年間の間隔を置いて行われました。そこで示されたすばらしい効果により米国内では政府及び医学界から大きな関心を集めました。健康状態全体を含む生活の質を改善するための大きな効果を示し、特に違法薬物依存で逮捕された人達を治療することで、三年以内に再逮捕される確率を75%から3%に下げました。その後マイアミに最初のDrug Court(薬物裁判所)が設置され、今日では全米に2644箇所の薬物裁判所が設置されています。(2011年12月31日現在)
(米国立司法研究所より)
オリキュロセラピーの歴史的背景:
オリキュロセラピーのルートは中国の鍼ですが、耳介の特定ポイントと身体の各部との関連は近代のフランスで開発されました。1957年フランスの医師 Paul Nogierが民間療法によって坐骨神経痛を克服した数人の患者達が耳に瘢痕があることを知ったのが始まりであるとされています。
近代の中国では1958年に発表されたDr.Nogierのチャートを検証するための調査が2000人の被験者を対象にして行われました。耳介のポイントと疾病及び症状への影響との関連が調査されました。(注:よく見る逆さ胎児のチャートはこの時期にできたもので、数千年前からあったようなものではありません。)
その後1980年には米国のカリフォルニア大学(UCLA)のOleson教授によって診断手段としてのオリキュロセラピーの科学的精度を調べる二重盲検無作為比較調査が行われました。統計学的に重要な意味のある75%の確率で40人の被験者の筋骨格系の問題部位を正しく特定できることを示しました。
WHOは、オリキュロセラピーに用いられる用語等の統一のための国際会議を重ね、アジア、ヨーロッパ、米国からの代表が集まった1990年のフランス、リオンでの会議で耳介の解剖学用語を決定しました。
オリキュロセラピーの神経反射メカニズム:
鍼のツボは解剖学的に特定部位に存在するものですが、オリキュロセラピーの神経反射ポイントはそのポイントに関連する身体部位に問題が生じている時にのみ現れ、そうでない時は検知することはできません。その神経反射ポイントは皮膚の電気抵抗が低下又は電気電動性が高い状態にあります。
身体の片側の病変部位は同側の神経反射ポイントにより強く反映されます。身体部位への刺激は上行して反対側の脳へ伝えられ、脳からの信号は下降して反対側の身体部位へ伝えられます。片方の耳介の神経反射ポイントへの刺激は上行して反対側の脳に伝えられ、反対側の脳からの信号が下降して反対側の関連する身体部位に働きます。このように上向、下降と2度の交差を通して元の側の身体部位に働きます。
(Auriculotherapy Manualより)
オリキュロセラピーによる診断と適応症:
オリキュロセラピーによる診断は精度が高く患者本人が殆ど気づいていないような問題ですら検知することが可能です。耳介の神経反射ポイントは手、足、腰の痛みなどのように身体の病変部位から離れていることが多く、その病変部位の痛みが非常に強く直接的なアプローチが不可能であるような場合でも比較的容易に施術を施すことが可能です。施術の対象になる身体問題の幅は広く、頭痛、慢性腰痛、高血圧、喘息、歯の問題と多岐にわたりWHOでは350種類の症状及び疾患に効果的であるとしています。中でも特徴的なのが禁煙や薬物依存のデトックス効果にあります。痛みのコントロールにも大きな効果が認められていて、時には以前に多くの療法や投薬を試していて全く効果が得られなかった人にさえ大きな効果を現します。
痛みや症状の解消は即効的な効果ですが、それだけではなく身体の自然な治癒を促進させる効果もあります。特定部位の身体活動を抑制又は促進させることにより自然の恒常性機能を高めます。
技術の習得が容易ですぐに利用が可能:
また、大きな利点として、もちろん深く学んで行くためにはそれなりの月日を要しますが、基本的な施術に関する技術の習得がとても容易であることです。数日間の講習で基本の部分を学ぶことが可能ですぐに臨床に用いることができます。
マイクロボルトの微弱電流機器:
オリキュロセラピーではポイントを発見し、施術を行うために微弱電流機器を用います。オリキュロセラピーの神経反射ポイントは関連する身体部位に異常がある場合にのみ現れるものです。ポイントが現れていない点をいくら刺激しても何も起こりません。また、日によって多少位置がずれたりすることがあります。そのためオリキュロセラピーを行うには神経反射ポイントを検知して施術を行うための機器が必要です。
オリキュロセラピーの神経生理学説:
大脳皮質にある人体の縮図と同様のマイクロシステムが耳介にも存在していて身体各部につながり耳介は丁度コンピューターのキーボードの様な役割を果たし、脳(コンピュータ)を介して身体の各部に働きかけることが可能です。病変のある身体部位を投射した神経反射ポイントでは汗腺を支配する交感神経が活発な状態にあり機器に反応を示します。オリキュロセラピーは病的な筋スパズムを起こしている筋緊張を中枢神経の運動神経細胞に作用し瞬時に解消すると考えられています。
Dr.Nogierは、耳介は胎児の発達の過程で基本の三種類の組織からなる数少ない部位の一つであり、耳介のそれぞれのタイプの胎生学的組織は異なる身体部位に関連していると説明しています。外胚葉からの組織は耳垂と耳輪尾部に見られます。その他では皮膚、髪、汗腺、角膜、眼のレンズ、鼻の上皮、歯、末梢神経、脊髄、大脳皮質、脳下垂体、松果体、副腎髄質などに見られます。又、中胚葉からの組織は対耳輪、舟状窩、三角窩に見られます。又、中胚葉からは骨格筋、心筋、平滑筋、結合組織、関節、骨、血液細胞、血管、リンパ組織、副腎髄質、泌尿生殖器系臓器ができます。外胚葉の組織は耳甲介に見られます。外胚葉からは消化器官、肺、内臓器官(肝臓、膵臓、膀胱、尿管、甲状腺、胸腺など)ができます。
Auriculotherapy Manualより)
耳介の胎生学的ゾーンと末梢神経:
耳介の神経支配は主に三叉神経、迷走神経、頚神経叢によって行われます。耳介を支配する神経の周波数領域は関連する身体部位が原始的な内臓器からより進化した器官へ上昇するにしたがって数値が大きくなっています。
(Auriculotherapy Manualより)
日常の臨床への応用:
全てをマスターしようと思うとそう簡単にはいきませんが、腰痛、膝痛、下腿の痛み、頚部痛、肩こり、頭痛などの筋骨格の問題やタバコ依存症、ダイエットなど私達が日常よく出会う症状に対処できるための知識と技術を習得するのは意外と容易です。その後に新たな問題に出会う度に少しづつ幅を広げて行くことが可能です。WHOでは約350の症状及び疾病に効果を認めています。中でもオリキュロセラピーは痛みコントロールと依存症(タバコ等)精神的障害に特に効果が認められています。